「住所だけあれば十分」と思ってバーチャルオフィスを契約する人は多いですが、実は転送電話や電話代行サービスを使いこなすことで“住所以上の価値”を引き出せるのをご存じでしょうか?
電話対応はビジネスの信用を大きく左右するポイント。
個人番号をそのまま公開すると信頼度が下がる一方、専用番号や電話秘書を利用すれば一気に“会社らしさ”が増します。
この記事では、転送電話・電話代行を活用したバーチャルオフィスの使い方を徹底解説。
コスト感・メリット・デメリット・具体的な利用シーン・失敗談まで網羅して、実践的なヒントをお届けします。
バーチャルオフィスに付随する電話サービスとは?
バーチャルオフィスでは住所提供が基本サービスですが、多くの運営会社は追加オプションとして電話関連サービスを提供しています。主に以下の2種類があります。
- 転送電話サービス
バーチャルオフィスで契約した番号(例:03番号)にかかってきた電話を、自分のスマホや固定電話に転送する仕組み。
→「東京の番号を持っている」という信用を得られるのが最大のメリット。 - 電話代行サービス(秘書代行)
スタッフが会社名で電話に応答し、内容を伝言やメールで知らせてくれるサービス。
→「会社の受付」があるように見せられ、ビジネスの信頼感が大幅にアップ。
転送電話のメリット・デメリット
メリット
- 都心の固定番号を持てるので信用度が上がる
- 自宅住所を出さなくても、代表番号を公開できる
- 自分で直接対応できるので臨機応変な対応が可能
デメリット
- 常に自分が出られる体制を整えておかないといけない
- 外出中や打ち合わせ中は取り逃しが増える
- 通話料がかかる場合もある
電話代行(秘書代行)のメリット・デメリット
メリット
- プロのスタッフが会社名で応対するので安心感がある
- 自分が不在でも電話を取り逃さない
- メールやチャットで要件をまとめて送ってくれるので効率的
デメリット
- 月額料金+従量課金が発生する(受電件数が多いと高額に)
- 細かいニュアンスを伝えきれない場合がある
- クライアントによっては「受付を挟むより直接話したい」と思う人もいる
利用シーン別ケーススタディ
1. フリーランスデザイナー
- 転送電話活用
東京03番号をバーチャルオフィスで取得し、自分のスマホに転送。クライアントからの電話は全て自分が直接受けるので、「一人でやってる感」を逆に好意的に受け取ってもらえるケースも多い。番号が都心の固定電話なので、ポートフォリオサイトに掲載しても信用度は十分。 - 電話代行活用
打ち合わせや制作に集中したいときは電話に出られない。代行スタッフが「◯◯デザイン事務所でございます」と応対してくれるため、プロ感を演出できる。メールで内容をまとめてもらえるので、後で落ち着いて対応できる。
2. ネットショップ運営者
- 転送電話活用
顧客からの問い合わせ電話を直接受けることで、細かい質問やクレームに即対応できる。商品知識が必要な業種では自分が出る方が効率的。 - 電話代行活用
発送作業や仕入れに追われているときは電話対応が難しい。スタッフが一次応対して「折り返しします」と伝えてくれるので、顧客の不安を最小化できる。
3. 士業(税理士・行政書士)
- 転送電話活用
クライアントと直接話したい士業に向いている。ただし会議中や相談対応中に別の電話がかかると「出られない=機会損失」になりやすい。 - 電話代行活用
スタッフが丁寧に応対し、要件を整理して送ってくれるので安心感がある。「受付がいる事務所」という印象を与えられるのも大きなメリット。
4. ITスタートアップ(少人数チーム)
- 転送電話活用
最初はコストを抑えたいので代表番号をスマホ転送。問い合わせ件数が少ないうちは十分機能する。 - 電話代行活用
投資家や顧客からの電話を逃したくない段階になったら、代行を導入。一次対応を任せておくことで、チームは開発や営業に専念できる。
5. コンサルタント
- 転送電話活用
出張や訪問が多いので、スマホに直接転送されるのは便利。顧客ごとに柔軟な対応ができる。 - 電話代行活用
プレゼンやセミナー中に電話がかかってきても、代行が受けてくれる。クライアントから「きちんとした会社」と思ってもらえる効果も大きい。
6. 海外在住の日本人起業家
- 転送電話活用
日本の番号を持てるのは大きな安心材料。ただし時差の関係で自分が直接出るのは難しい場合もある。 - 電話代行活用
日本時間でスタッフが対応してくれるので、海外にいても「国内に拠点がある」ように見せられる。要件はメールで送られるため、時差を気にせず確認可能。
7. 採用活動中の企業
- 転送電話活用
応募者からの連絡を直接受けて、素早く対応。面接日程の調整などもその場でできる。 - 電話代行活用
応募が殺到して電話が鳴り止まない場合、代行スタッフが一次対応。応募者を待たせず、選考の印象を損なわない。
転送電話・電話代行の料金相場と従量課金の落とし穴
転送電話の料金相場
- 月額基本料:1,000円〜5,000円程度
- 通話料:1分あたり10円〜30円前後(キャリアや契約プランによって変動)
- 番号取得費用:初期費用1,000円〜3,000円程度がかかることも
一見シンプルですが、転送先がスマホだと「転送された通話料」を自分が負担するケースがほとんど。電話が多い業種だと想定以上にコストが膨らみます。
電話代行の料金相場
- 月額基本料:3,000円〜15,000円程度
- 従量課金(受電数に応じて加算):
・10件まで無料、それ以降は1件200円〜500円
・または「100件まで月1万円」といった段階制プランもあり
→ 基本料は安く見えても、受電件数が増えると一気に高額になるのが落とし穴です。
よくある「想定外の出費」パターン
ケース1:転送電話で通話料が爆増
小規模ECショップを運営する人が、顧客問い合わせを全て転送電話で受けていたケース。
1件あたり平均5分 × 月100件 × 通話料20円/分 → 月1万円の通話料に。
「基本料は安いのに結局スマホ料金と合わせると高くついた…」という失敗談は多いです。
ケース2:電話代行の従量課金で予算オーバー
コンサルタントが「月額5,000円(30件まで無料)」の電話代行を契約。
想定以上に問い合わせが殺到し、月100件に到達。追加70件 × 300円 = 2万1,000円の超過料金。
「最初の数ヶ月は安いと思ったのに、気づけばレンタルオフィス代並みに…」ということも。
回避のコツ
- 平均受電件数を見積もってから契約する
「1日何件かかってくるか」をざっくり予測。業界平均を調べるのも有効です。 - 定額制プランを選ぶ
電話が多い業種(EC・士業・採用活動中など)は、従量課金ではなく「月100件まで定額」のプランを選んだ方が安心。 - 併用戦略をとる
・少数の重要顧客 → 転送電話で直接対応
・一般問い合わせ → 電話代行に任せる
という組み合わせでコストを抑えつつ信用を確保できます。
ありがちな失敗談と回避策(電話サービス編)
転送電話の失敗談
1. 電話が取れず信用を失った
小さなITスタートアップの代表が、転送電話で03番号を取得。しかし、開発に集中している間に電話を取り逃すことが多く、後からかけ直しても「なかなか繋がらない会社」と言われてしまった。
→ 回避策:
- 電話が多い業種は転送電話だけに頼らず、代行サービスと組み合わせる
- 不在時は留守電に「◯時間以内に折り返します」とメッセージを入れて安心感を与える
2. 通話料が高すぎて赤字に
転送電話は安いと思い込んでいたが、長時間の問い合わせが増えて通話料が膨れ上がった。最終的には「家計の電話代より高い」と愕然…。
→ 回避策:
- 長電話になりやすい業種は「問い合わせフォームやメールへの誘導」を強化
- 通話料込みの定額制プランを選ぶ
電話代行の失敗談
1. クライアントの要件が伝わらなかった
秘書代行に任せていたが、専門用語や細かいニュアンスが伝わらず、クライアントから「話が通じない」と不満が出た。
→ 回避策:
- 業界用語や社名読み方などを事前にマニュアル化して共有
- 定期的にフィードバックを行い、対応品質をチューニングする
2. 月額料金が跳ね上がった
「月30件まで基本料、以降従量課金」のプランで、キャンペーンや採用活動の時期に電話が急増。予想外の請求に頭を抱えた。
→ 回避策:
- 電話数が増える時期はあらかじめ見積もりを出す
- 定額制プランに切り替える
3. 対応がマニュアル的すぎて不評
「折り返します」の一点張りで、クライアントが冷たい印象を持った。結局「直接携帯番号を教えてください」と言われ、代行の意味が薄れた。
→ 回避策:
- 「この件ならすぐ担当が折り返します」といった柔軟なルールを設定
- 重要顧客リストを作って、優先度別に対応を変える
両方に共通する失敗談
1. 契約前に試さなかった
「安いから」と即契約して失敗。結果的に解約手続きや登記住所変更で余計なコストが発生。
→ 回避策:
- 契約前にお試し期間を利用する
- 口コミや利用者レビューを確認する
2. ビジネスモデルと合わなかった
「電話がほとんど来ないのに代行契約して無駄にした」「逆に電話が多すぎて転送電話では対応しきれなかった」など。
→ 回避策:
- 自分の業種で平均的にどれくらい電話が来るのかを把握する
- 必要に応じて柔軟にプランを見直す
まとめ
バーチャルオフィスは「住所を借りるだけ」と思われがちですが、転送電話や電話代行サービスを組み合わせることで“住所以上の価値”を発揮します。
- 転送電話の特徴
・都心の固定番号を持てるので信用度がアップ
・自分が直接対応できるので柔軟性が高い
・ただし取り逃しや通話料増大に注意 - 電話代行の特徴
・秘書が会社名で応対するため安心感が大きい
・不在時でも機会損失を防げる
・ただし従量課金でコストが跳ね上がることも
結論としては、
- 電話が少ない・直接対応したい人 → 転送電話
- 電話が多い・信用や効率を優先したい人 → 電話代行
そして最も賢いのは、
「重要顧客や少数案件は転送電話」「一般問い合わせは代行」
と使い分けるハイブリッド戦略です。
電話対応は、住所と並んで「会社らしさ」を強く印象づける部分。
うまく仕組みを整えることで、少人数でも“しっかりした会社”を演出しながら、事業に集中できる環境を作れます。
住所だけにとどまらないバーチャルオフィスの活用術。
次の一歩は「電話サービスをどう組み合わせるか」を考えることかもしれません。